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人の感情はどこから来るのか?

前回のブログでは、文化が人の認知にどのように違う影響を与えるのかを紹介しましたが、今回はどの文化にも共通する普遍的なもの、「感情」についてです。

ミライセルフのプロダクト、mitsucariでも使っている、表情認識テストにまつわる、感情研究の背景や歴史に少しだけ注目していきたいと思います。

 

さて、私たちの感情はどこから来るのでしょうか?私たちは、文化的なコミュニケーションによって感情を学んでいるのでしょうか、それとも我々は生まれながらにして感情を表したり、認識する能力を備えているのでしょうか?

 

実はこの問いに対してはじめに有力な見解を示したのは、チャールズ・ダーウィンでした。

 

ダーウィンは1859年に「The Origin of Species(種の起源)」で、人間はサルやチンパンジーなどの原始的な動物から進化した、と主張しました。そのあと、1872年に「Facial Expression of Emotions in Man and Animals」という本で、顔に表れる感情は、人種や文化に関係なく、普遍的なもので、人間が進化する過程で獲得した機能であると、自らの観察を根拠に主張しました。

 

しかし1920年代に、文化人類学者であるマーガレット・ミードが、サモアでのフィールドワークをもとに、「感情とは言語と同じように、生まれ育った文化によって違うものだ」とダーウィンの主張を否定しました。

 

ダーウィンとマーガレット・ミードを筆頭とした文化人類学者たちの論争に決着をつけるため、1960年代に、現在カリフォルニア大学サンフランシスコ校の名誉教授であるポール・エクマン(アメリカのTV番組、Lie To Me の主人公のモデル)が、「もし感情が文化圏によって違うなら、西洋文化に触れたことのない民族は、異なる感情を持っているだろう」と仮説を立て、パプア・ニューギニアに行き、調査をしました。

 

そしてエクマンの研究で明らかになったのは、「ダーウィンは大まか間違っていなかった」ということです。

 

エクマンは下の写真をニューギニア人に見せて、どの感情を表しているかを聞いてみると、 正確な解答を得られました。

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(それぞれどの表情でしょうか?)

 

さらに、ニューギニア人自身も、西洋人と全く同じ表情を、それぞれの感情にあった表情で表すことが出来ました。

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 (どの感情を表しているか分かるでしょうか?)

 

これをきっかけに、エクマンは人間の表情を科学的に研究するために、Facial Aciton Coding Systemという、顔面にある40もの筋肉のコンビネーションからなる感情を全て読みこむことのできる、表情解析ツールを開発しました。そして現代にいたるまで、彼を筆頭に感情研究は一気に盛んになりました。

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そして今現在報告されている中で、文化、人種、言語、国、全く同じように認識でき、表すことのできる人間に普遍的な感情は7つあると言われています。

 

さらに、「人間は感情という能力を後天的に習得するのか、それとも先天的なものなのか」という問いに対しより明確な答えを示すために、筆者の指導教官である、サンフランシスコ州立大学のデイビット・マツモト教授が、柔道アメリカ代表のコーチとして自ら出向いたアテネオリンピックで、興味深い研究をしました。

 

下の表情の違いが分かるでしょうか?

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両方の写真は、試合に負けた瞬間に撮影されたものです。しかし実は、左の選手は先天的に盲目です。マツモト教授は、パラリンピックの選手に着目して、生まれつき盲目の選手と健常の選手の表情を、オリンピック中に写真をとり、Facial Aciton Coding Systemを使って解析したのです。すると、それぞれの場面において、両者の間の顔の筋肉のコンビネーションは、ほぼ100%一致したのです。

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勝ったときの感情を表すこのポーズも、盲目の選手と健常の選手の間に全く違いが見られないのが分かるはずです。

 

さらに興味深いのは、表彰式の表情をそれぞれ比べてみると、銀メダリストは盲目の選手も健常の選手も、同じ「嘘の笑い」をしていることが分かりました。悔しいから周りには見られたくない、でもこのような場所だから笑っていた方が良いという、ある程度社会性のある場面を経験しながら学ぶであろう表情ですら、盲目の選手には生まれつき備わっていたのです。

 

先天的に盲目の選手は、生まれてから一度も他人の表情を見たことがないため、人の顔を見て表情を学習することができないはずです。それにも関わらず、40の筋肉からなるコンビネーションを、勝ったとき、負けた時、表彰台に立ったときなどの状況に応じて、健常者と全く同じように動かし、同じ感情を表すことができたのです。

 

これら表情に関する一連の研究は、ダーウィンの「人間の感情は普遍的だ」という主張を強く裏付ける証拠を示しました。特にマツモト教授の盲目の選手に注目した研究は、感情表情は人間が生まれながらに持っている機能だということを示す強力なメッセージでしょう。

 

現在、感情・表情に関する知見は、FBIなどの政府機関、臨床心理、ビジネス交渉、映画やテレビなどに幅広く応用されています。ミライセルフのテストも、このような研究に基づいた知見を使ってテストを作っています。筆者は、日常生活はもちろん、「とんねるずの食わず嫌い王」で、嘘を見抜くのに、応用したりしています。

 

 AIoL(アイオーエル)の時代になり、Pepperくんを初め、感情を備えたらしいロボットまでもが登場してくるというニュースもあります。しかし、犬やサルなどの生物に共通する感情は、人間が生き物の一種であることの証であり、「感情を正確に表す能力」は、ロボットも未だに越えられない、私たち人間に特別な能力なのではないでしょうか。

 

Kodai

 

 

 

 

 

文化と認知~文化心理学から~

外国人と出会ったとき、外見の違いはもちろん、仕草やマナーの違いに驚かせられることは多いと思います。語学を習得して、ある程度外国人とコミュニケーションをとれるようになった人ならば、「この国の人たちは私たち日本人と考え方がまるで違う」と驚いたり、ストレスを感じたり、また羨ましい、と思った事が一度はあるのではないでしょうか。

 

なぜ、ヒトは育った国、環境、文化によってこれほどまでに考え方が異なるのでしょうか?

 

これらの問いに答えるために、また異文化交流が激化する現代において、有力な見解を与えてくれるのが、筆者のお気に入り、「文化心理学」です。

 

これから数回にわたり、文化心理学の知見・研究結果を交えて、文化が人間の思考や認知に与える影響について紹介したいと思います。

 

まずは導入として、育った環境が視界に与える影響について見てみましょう。

 

 

心理学でも有名な、下の図のような錯覚を見たことはあるでしょうか。

 

(図1)右と左の縦線は、どちらが長いでしょうか?

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図1は、ミューラーリヤー錯視と呼ばれるもので、どちらの縦線も物理的な長さは全く同じなのに、ほとんどの人にとっては左の縦線の方が長く見えてしまう、という錯覚です。

 

なぜそのような錯覚が起きるのかというと, Carpentered world theory (カーペンターワールド理論)という理論で説明できます。(解釈は他にもいろいろあるみたいですが、文化差を説明するうえでこれが一番有効だと思いました。)

 

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左の絵では、上下の線の角度が下向きになっていることによって、壁のコーナーが自分のほうに向いている様子が見えます。すると、「近づいている物質なのだから、物理的なサイズよりも自分にとっては大きく見えるはずだ」という解釈のもと、賢い脳はそのズレを、サイズを縮小することによって修正しようとします。

 

逆に右の絵では、上下の線の角度が上向きになっていることによって、壁のコーナーが奥に引っ込んでいる様に見えます。すると、「遠ざかっている物質なのだから、物理的なサイズよりも自分にとっては小さく見えるはず」という解釈のもと、賢い脳がそのズレを、サイズを拡大することによって修正しようとします。

 

このようなズレを修正しようとする脳の勝手な試みから、物理的には同じ長さである図1の縦線も、左のほうが長く見えてしまうのです。

 

われわれ近代人は、大工(カーペンター)によって作られた、角ばった建物に囲まれた世界で生活しています。つまり、私たちが気が付かないうちに、「この角度ならこう見えるはずだ」という風に脳が勝手に学習していき、分かっていても騙されてしまう錯覚が起きるようになるわけです。

 

 

もう一つ例を見てみましょう。 

(図2)縦線と横線、どちらが長いでしょうか?

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図2は、垂直・水平錯視と呼ばれるもので、どちらの線も実際の長さは全く同じなのに、縦線の方が長くみえてしまう、という錯覚です。

下の図を見てみるとわかりやすいでしょう。

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横断歩道と、垂直に伸びている道路は物理的な長さは一緒です。しかし、脳の「奥行きのある垂直線は、距離が長いわけだから、実際の長さは長いはずだ」という解釈によって、奥行きのある道路のほうが長く見えるように勝手に修正されてしまうので、図2のような錯覚が起きてしまうのです。

 

これらの錯視が示唆することは、

 

人間の認知や視覚は、現実を正確に反映しているものではなく、経験や学習に基づいて、かなり積極的に、能動的に世界を捉えようとしている。」ということです。

 

 

そして、1905年に、リバーズという研究者がこれらの図を使って面白い研究をしました。

 

リバーズは上の二つの図を、イギリス人、田舎に住むインド人ニューギニア人に見せて、それらの回答を比較しました。

 

すると、

図1のミューラーリヤー錯視においては、イギリス人の方がインド人とニューギニア人よりも錯覚しやすかった」という結果が得られました。

 

なぜでしょうか?

カーペンターワールド理論によると、

イギリス人は、角ばった建物に囲まれている近代的な環境で育ってきたので、脳にそのように視界を解釈をする癖がついていた。反対に、そのようなビルの全くない環境で育ってきたインド人とニューギニア人には、そのように視界を解釈する機能が脳に備わっていなかった。」と言えます。

 

さらに面白いことに、図2の垂直・水平錯視において比較してみると、インド人とニューギニア人の方がイギリス人よりも錯覚しやすかった」という結果が得られました。

その理由はおそらく、「インド人とニューギニア人の育ってきた非近代的な環境では、水平線を遮る建物などがないため、より奥行きのある景色に触れる機会が多い。だから、奥行きのない近代化した環境で育ってきたイギリス人と比べて、錯覚に陥りやすかった」と言えます。

 

これらの研究結果を踏まえると、

  • 私たちの脳や視界は、学習や経験によって、積極的に解釈しようとしている。
  • そのような学習や経験は、無意識に行われる。
  • 私たちの視覚・認知は、育ってきた環境によって大きく異なる可能性がある。
  • 一度学習した癖は、分かっていても取り除くのは難しい。

というようなことが言えるのではないでしょうか。

 

リバーズの研究は、普遍的とも言われていた無意識・機械的に判断されるはずの視覚と認知といった機能ですら、文化に左右され得るという点で、強力なメッセージを秘めていると思います。

 

他にも、文化心理学の研究領域は感情の感じ方の違い、理由づけの違い、価値観の違い、性格の違い、意思決定の違い、幸福のとらえ方の違い、など広範囲にわたります。これらの領域については、徐々にシェアしていこうと思います。

 

補足ですが、私たちは多文化からやってきた人たちと比べようとすると、どうしても違いに注目しがちですが、全世界共通の、普遍的な部分も私たちは共有していることもまた忘れるべきでない事実です。このことについても、徐々にアップしていこうと思います。

 

異なる文化的背景を持つ外国人と出会ったとき、共有している物理的空間は一緒のはずなのに、育ってきた環境によって、お互いの目に映っている「当たり前」ものは実は大きく異なるかもしれない。そのことに気づいていれば、お互いをより深く理解できる第一歩になるかもしれません。

 

 

Kodai

 

AKBを例に見る「自分の能力に影響を与える社会的な要因」

人の能力は、遺伝で決まるのか、それとも環境によって決まるのか。

 

この問いは、科学界における永遠のテーマです。正しい答えはおそらく「両方」なのですが、人間のどの場面に注目するのかによっては、遺伝/環境の割合が変わってくるでしょう。

 

心理学シリーズ第一弾は、これから数回に渡り、「自分の能力に影響を与える社会的な要因」をテーマにした内容をシェアしていきます。環境の力に注目してみることで、自分の友達や親、教育システム、または文化などで自分はどのように変わって来たのかを意識する良いきっかけになればと思います。

 

まずは元AKB48のメンバーで、現在女優の前田敦子さんを例に見て見ましょう。

 

(注:筆者は特にAKBの熱狂的なファンではありません。)

 

彼女は、AKB48(毎年何百人といるメンバーの中から順位を決めている、日本で有名なアイドルグループ)の発足当初から、不動のセンターとして活躍してきました。

 

彼女がセンターとして活躍し続けることが出来たのは、彼女にもともとそのような能力があったからでしょうか?彼女には、持って生まれた、他の女の子たちと何か違う才能があったのでしょうか?彼女は、他のメンバーと比べ、格段に可愛かったのでしょうか?本当に、秋元康氏が、リーダーとして輝く将来性を見抜いていたのでしょうか?

 

社会心理学の古典的なものに、「Self-Fulfilling Prophecy (自己達成的予言)」というものがあります。小学校を使った有名な実験があり、そこでは小学校の教師二人のうち一人に、「あなたには優秀な生徒たちを教えてもらいます」、と伝え、もう一人の教師には、「平凡な生徒たちを教えてもらいます」と伝えます。実は、生徒たちは適当にランダムに二つのグループに分けられただけなのに(2グループ間にもともとの学力の差はなかった)、学期末の成績では、前者が教えたクラスの方が実際に成績が上回りました。

 

つまり、教師達の、「この子たちは優秀な生徒たちだ」「この子たちは平凡だ」という期待そのものが、実際の教師と生徒間のコミュニケーションに影響を与え、期待がそのまま現実のものになってしまう、という現象です。この心理現象は社会心理学の教科書には必ず載っている重要なものです。

 

前田敦子さんの例に戻してみると、強制的に彼女をチームのリーダーという地位に位置づけることで、まずは周りの人間が彼女をそういう風に扱うようになった、ということが言えます。

 

そしてさらに、周りの期待を助長する現象に「確証バイアス」があげられるでしょう。確証バイアスとは、人間の「仮説や期待に沿った情報ばかりを探してしまう」という、昔によく研究された人間の認知バイアスです。

 

例えば、「日本人は集団主義だ」という先入観をもった外国人なら、きっと日本人が控えめで、周りに気遣って、主張しないシーンばかりが目に入り、そのような情報しか記憶に残らないでしょう。

 

しかし、全く逆に、「日本人は個人主義だ」という先入観をもった外国人なら、きっと日本人のユニークなファッション、わがままな一人っ子、受験における厳しい競争など、そのような先入観に合った情報を多く探し、記憶するようになるでしょう。

 

「おれの英語勉強法は優れている」という信念を持っている人が、わざわざその信念を否定する可能性のある情報を探そうとはしないように、人間は、確証バイアスによって、持っている先入観や期待に合った情報しか好んで選択しない傾向があるのです。

 

そこで、前田敦子さんの例に戻ってみると、「前田敦子がAKBのリーダーだ」という先入観を持った周囲の人は、「あの秋元さんが選んだんだから、すごいに違いない」とか、自然と彼女の「リーダーっぽい」側面ばかりが多く目につくようになります。

 

そしてそのように周囲に扱われていくにつれて、次第に彼女自身も「わたしってできる」と思うようになるでしょう。そうすると、彼女自身の立ち振る舞いや考え方も次第に変わっていき、よりリーダーらしくなっていきます。

 

そうすると、さらに周りの人間が「やっぱり彼女は何か持っている」と、彼らの先入観が正しかったんだと確信できます。このような周りの人間と自分との間のフィードバックのサイクルはどんどん加速していき、数年後にはものすごい変化が起きていることになります。これこそが、「自己達成的予言」のメカニズムです。

 

この可能性を考慮にいれると、実は秋元康氏が本当に彼女の才能を見抜いていた、いないにかかわらず、AKBどのメンバーでも前田敦子さんのような人生を歩む可能性は十分にあったと言えます。極端な話、リーダーをくじ引きで決めてもよかったわけです。

 

少し極端な例をあげましたが、このように周囲の期待に沿って自分自身が変わっていく、あるいわ自分自身の先入観によって相手をも変えてしまう、という場面は日常でも多くあると思います。

 

いつも周りからは「お前はB型だからな~」と言われているとしたら、周りがそういう期待を持っているため、自分の自己中な行動は緩い目で見てもらえるでしょう。逆にB型っぽくない行動をとれば、「お前らしくない」と言われ、そういう行動はとらないようになるでしょう。もともとそんなにB型っぽくない側面も多く持っている人でも、このように周囲から扱われることによって、数年後には「生粋のB型人間」になっていることでしょう。

  

 

自分が親であったなら、たとえ本気に思っていなくても、「お前はできる子だ」と言い聞かせて育ててあげたほうが、数年後には本当にできる子になっているかもしれません。

 

いつも家で「お前はできない子だ」と言われている子供と、「お前は頭が良い」と言われている子供では、勉強に対する姿勢はずいぶんと変わってくるでしょう。仮に同じ知能を持っていたとしたら、両者の間には数年後にはものすごい差がついてしまうと思います。

 

あなたの思いつく、社会で成功している人たちのほとんどは、小さいころから高い自尊心と信念を持ち続けているはずです。彼らももしかしたら、才能においては周りと特に差はなく、常日頃から「俺はできる」という信念を持ち続けた結果、それが現実になった自己達成予言の究極な例なのかもしれません。

 

人間関係において言えば、恋人や親友のネガティブな部分をいつも指摘するのではなく、なるべく良い面を日ごろから意識的に指摘してあげれば、自分自身の新しい気づきを促す事になるかもしれないし、おのずとその人の振舞いはポジティブなものへと変化していくかもしれません。

 

このような古典的な心理現象に着目すると、周りの人間が自分の価値観や人間性に与えている影響、つまり環境が与える力は思っているよりも大きいかもしれないと考えさせられます。

 

 

 

Kodai

 

 

心理学シリーズ

弊社ミライセルフを他の会社と分ける特徴は、より学術的・科学的な知見や理論に基づいたサービスを提供しようとしていることです。これは、バークレービジネススクールを卒業した、ミライセルフCEOのこだわりでもあります。

 

そういうわけで、ミライセルフの創業からインターンをしているKodaiが、これから心理学、行動経済学などのトピックをブログで紹介していきたいと思います。筆者は、現在サンフランシスコ州立大学の「文化と感情研究室(Culture and Emotion Research Laboratory)」のプロジェクトコーディネーター・研究助手で、同校で社会心理学を専門に大学院を卒業しました。

 

心理学のトピックは、幅広いので、割と一般読者層に受け入れやすく、日本のメディアでもいろいろな最新研究や知見が出回っていると思いますが、欧米の学術雑誌で発表された論文を解釈した英語のメディアを、さらに日本語に訳しただけ、という場合がほとんどです。

そうした場合、元の論文と2回解釈のリレーがあるので、元の情報が正しく伝わらない、ということがしばしば起きます。

そうした問題を解消すべく、心理学を専門に研究している筆者が、なるべく正しい情報をお届けできるよう、努めたいと思います。

また、欧米で研究されたことが日本人にもそのまま当てはまるのかどうか、という文化による違いにも注意をはらい、よりクリティカルな立場で情報をシェアしていけたらと思います。古典的な研究・最新の研究もふまえ、「人間や自分の新しい一面」に気づかせてくれる、幅広い分野を扱っていけたらと思っています。

 

「心理学、行動経済学には興味はあるけど、読んでみると難しいし、なかなか時間がさけられない。。。」という人のために、筆者が論文・本の重要なポイントだけを拾った情報を伝えていきます。たとえ一冊の本を読んでも、全ての内容を覚えることは不可能だし、だいたい重要なポイントを2-3抑えておけば良いものです。「読めば本一冊分の大体言わんとしている事が理解できる」ようなブログを目指していきます。

 

これらの点を踏まえ、すこしでも多くの人に読まれるべき本や論文の内容を、正しい形で発信していき、学問と社会の架け橋的な役割を果たせたら良いと思っています。

 

あらゆる面の人間の行動を探求するのが心理学です。このブログを通して、新しい人間の一面、新しい自分自身への「気づき」を手助けできたら、幸いです。

 

Kodai

Zappos最終回~カルチャーとビジネスモデルのマッチ~

前回のブログでは、生田氏による自己分析セミナーの様子をまとめました。

 

偶然にも、生田氏が弊社のブログで触れたことのあるZappos のカルチャーについて話されていたので、今回はZappos第三弾(最終回)として、生田氏のセミナーで得た内容を取り入れながら、分析をしていこうと思います。

 

生田氏は、今の時代「ビジネスモデルと会社のカルチャーがマッチしている会社ほど伸びている」と指摘していました。生田氏はアイデンティティーに関する独自の理論で、数々の企業のアイデンティティー発見を手助けし、それぞれのビジネスモデルにマッチングさせ、成功させてきました。

 

生田氏は、ビジネスモデルとカルチャーがマッチし、また強いカルチャー作りを実践している例として、Zapposを挙げていました。また、今回のSF訪問の前にラスベガスにあるオフィスを直接出向いて見学してきたそうです。

 

では、Zapposのカルチャーは、どのようにしてビジネスモデルとマッチし、機能しているのでしょうか?

 

Zapposのビジネスモデルとは?

 

オンラインで靴と服を売るZapposは、ビジネスモデルの最大の強みとして「カスタマーサービス」をあげています。

 

Zapposの細かいサービスを挙げると

「無料配達」

「即日配達」

「無料返品」

「サプライズで花束を贈る」

などがありますが、やはり特筆すべきは

「コールセンターの質」

です。

 

CEOのトニー氏も自身の本で公言しているほど、コールセンターによるカスタマーサービスを会社第一の優先事項としています。そして、カスタマーサービスがZapposのビジネスモデルの柱となり、他社との差別化を可能にしている要素になっています。

 

「Zapposっていうカスタマーサービスが徹底している会社があるらしい」

 

「社員がすごく面白い会社があるらしい」 

 

一見単純に見えますが、この感情に訴える「WOW」の感覚の部分は、ビジネスにおいて人がものを買うことになる大きなモチベーションになり、口コミの広がりは想像するよりも爆発的だと、トニー氏も自身の本で書いています。

 

ここでZappos第一弾にも書いたZapposのビジネスモデルを振り返ってみると、

 

社員の幸せ(カルチャーの共有)→顧客の幸せ→会社の利益

 

なので、社員と顧客が直接対話をすることができるカスタマーサービスが、社員の幸せ→顧客の幸せ をつなぐパイプの役割を果たし、Zapposの社員の幸せを内側から外側に伝染させていこう、という戦略です。

その結果、なんだか陽気で幸せそうな人たちが働いている、Zapposにどんどん人が集まってくる図式なっています。

 

カスタマーサービスの徹底

 

Zapposのカスタマーサービスに関する有名な話があります。

 

カルチャー重視の採用試験を終えた後、「全新入社員」が、所属する部署に関係なく、一か月間カスタマーコールセンターの有給研修をさせられます。そして一か月間の研修トレーニングのあと、

 

「研修お疲れ様。現時点で、会社に残りたくないなら、2000ドルをオファーするから去ってくれ」と告げます。

 

つまり、Zapposの最大優先事項であるカスタマーサービスを、心の底から楽しんでやれない社員は、お金を払ってでも手放したい、というZapposの強い意志表示をするのです。

また、本当に価値観を共有できる人材を獲得するためには、一時的な出費は恐れないという、長期的経営方針が伺えます。

 

このような工夫により、

「目先の名声や成功にとらわれ、Zapposのカルチャーを理解していない人材」

「価値観を偽ってお金稼ぎのを優先させる人材」を見抜くことができます。

 

この採用方法は有名で、Zapposのカルチャーを特徴づけるエピソードとしてたびたびメディアや教科書に取り上げられています。

 

そんなところ、筆者もZapposのカスタマーサービスとはなんぞや、と興味がわいてきたので、何も買う予定はなかったですが、私自身直接電話してみることにしました。

 

ホームページを見て見ると、一番先に目が行く画面左上に、はっきりとカスタマーサービスの電話番号が目に入ってきます。

 

 

夜の10時30分。

 

 

黒人訛のあるヒップホップ調のトーンの社員が電話にでました。

 

社員「どうしたんだい?」

私「最近Zapposの本を読んでカスタマーサービスに興味を持ったから電話してみたんだけどいい?」

社員「もちろん全然いいぜ。ナイトシフトだし暇だからなんでも聞いてくれ。」

私「Zapposでは全員コールセンターを経験させられると聞いたけど、本当なの?」

社員「本当さ。俺もやったよ。」

私「今は何人が電話対応しているの?」

社員「今は合計16人だな。昼間は100人体制で、もっと賑やかなんだぜ。」

私「社長のトニーシェイには会ったことある?」

社員「もちろんさ。彼と写真をとって彼の顔の写真を拡大して目のところをくり抜いてトニーシェイマスクを作っていつもそれをかぶってるぜ~」

 

 

約30分間、Zapposとはどういう会社なのか、また少しプライベートなたわいもない会話をし、最後にはアカウントを作っている自分が居ました。

 

短い時間でしたが、話してみた感想は、

「なんでも話しやすい友達みたいな感覚で、とにかくマニュアルにとらわれない柔軟な対応をしてくれた」ということです。

まとめ

Zapposのビジネスモデルは、社員の幸せ→顧客の幸せです。そのモデルの基盤になっているのがカスタマーサービスで、社員と顧客を結ぶ重要な役割を果たしています。カルチャーは、そのカスタマーサービスに一貫性を与え、社員の共通理解を促す役割を果たしています。そしてそのカスタマーサービスの質を徹底することで、より多くの顧客に「WOW」を届け、それが口コミによって広がり、より多くの顧客を獲得することができています。 

これからMeryeselfも、ビジネスモデルにマッチしたカルチャーとはなんなのか、試行錯誤しながら作っていきたいと思っています。 

Kodai

生田知久氏による研修~アイデンティティー統合セミナー~

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先日、サンフランシスコダウンタウンにあるデジタルガレージ様のオフィスをお借りして、人材分析界の発明家、スティーブジョブスこと、生田知久氏をお招きして、自己分析のセミナーを行いました。今日は初日のアイデンティティー統合セミナーにだけ参加したKodaiが、遅くなりましたが一日目の様子をまとめようと思います。

 

個々の価値観と会社の価値観のマッチングが、それぞれのベストパフォーマンスにつながると考えているMeryeselfとして、アイデンティティーという概念は重要になってきます。なるべく多くの事を学び、弊社に生かせる部分もありました。

 

セミナーの形式上、ディスカッションも多く、それぞれのグループで感じたこと、まとめたことは多少変わってくるとは思いますが、中でも印象に残った次の2点について、まとめたいと思います。

 

  1. アイデンティティマジック体験
  2. 中庸の思想

アイデンティティマジック体験

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「イメージと身体連動ワーク」と称し、まず生田氏がデモンストレーションを見せます。

このデモンストレーションでは、二人一組になり、一人が踏ん張りもう片方が体を押す、というポジションを取ります。

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一回目では、押す方がなるべく頑張って相手を押そうとします。

そうすると、踏ん張ってる相手はなかなか動きません。

 

ところが、力の伝える集中点を、押している手の周りから、水平線上にあるより遠くの一点に移し、そして頭のなかで「ポジティブなイメージ(何かを大好きになるイメージ)」を持つと、さっきまで動かなかった相手がいとも簡単に吹っ飛んでしまうという現象が起きました。

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力に自信のあった私も、意識をずらしたときのパワーと普通の時とでは、同じ人かとは思えないくらいの力を感じました。

 

 この身体体験を通して、生田氏が伝えたかったことは、

「普段なんとなく「こうあるべきだ」と思っていることでも、わずかに視点を変えることで、より効率の良い方法に出会ったり、より本質に近い部分が見えてくる。」

 

という 事ではないでしょうか。

 

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中庸の思想

このアイデンティティマジック体験から関連付けて、さらに生田氏は 「中庸」の発想をアイデンティティ発見にとりいれようと、独自の理論をお話してくれました。

 

私たちのアイデンティティーは、しばしば社会や環境の制限によって抑えられています。ポジティブなアイデンティティーも、「こうあるべき」だという同調圧力により、弊害だととらえられてしまいます。

例えば、周りと協調することが得意な人でも、ある状況では、「意見のない人」 と批判されてしまいます。

しかしこのような弱点とも考えられる自分の一面も、視点を変えればもっとも強い武器になりえます。生田氏は、このような考えは東洋ならではの中庸の思想に通ずるとし、自分の負の部分と正の部分は表裏一体であることをまず認識することが、自分のアイデンティティー発見、さらにはどのような場所で自分は1番輝く事ができるのかを知るきっかけになるとお話ししました。

自分のポジティブとネガティヴのアイデンティティーが分裂している状態ではなく、うまくバランスとれた、「統合」された状態が理想です。

 

個人的な感想として、この中庸の考えは、西洋の組織、個人も是非真似するべき考えだと感じました。西洋哲学では、物事の絶対の真理を求める、「白か黒か」をはっきりさせる思想が強いとされています。東洋のようなよりニュアンスのある考え方は、アイデンティティーを発掘する上で、非常に役に立つと思います。

 

今回のセミナーで、個人として、自分のアイデンティティーの見つけ方、生かし方を学ぶ事ができました。また、Meryeselfとしても自分の本質を知る上で新たな視点を手に入れる事ができたと思います。

 

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朝から夕方までの長いセミナーでしたが、間に体を使ったアクティビティーを挟んだり、ディスカッションが多かったので、それぞれが考え、飽きることなく楽しめたセミナーだったと思います。

 

 

 

AIoL アイオーエル

今日はTakaが書いております。

IoTなどは言葉として言われて久しいですが、

「AIoL= アイオーエル」という言葉をご存知でしょうか。

Artificial Intelligence of Lifeの略です。まだあまり耳にすることが少ない言葉ですがこれからもっともっと重要になってくる概念なのかなと思います。

人口知能があらゆる人間の判断をサポートし、人工知能と人間の考えがバランスしながらよりよい決断がなされていくような生活をさす言葉です。

Googleの検索でサンフランシスコ仕事探しと入力するとそれこそ多種多様な仕事の情報が出てきてほとんどのものは検索した当人にとっては意味がない情報です。

情報>判断能力という不等式が圧倒的にアンバランスになっていく現代においてはある程度人工知能によって選別された情報が届く。セレンディピティすら必然で起こすようなそんなさじ加減が必要になってくると思っています。

人間の知能や感性と人口知能がマッチした暮らし。

Artificial Intteligence of Life = AIoL.

アイ、オー、エル

AIoL時代を支えていく会社になっていきたいと思っております。