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AKBを例に見る「自分の能力に影響を与える社会的な要因」

人の能力は、遺伝で決まるのか、それとも環境によって決まるのか。

 

この問いは、科学界における永遠のテーマです。正しい答えはおそらく「両方」なのですが、人間のどの場面に注目するのかによっては、遺伝/環境の割合が変わってくるでしょう。

 

心理学シリーズ第一弾は、これから数回に渡り、「自分の能力に影響を与える社会的な要因」をテーマにした内容をシェアしていきます。環境の力に注目してみることで、自分の友達や親、教育システム、または文化などで自分はどのように変わって来たのかを意識する良いきっかけになればと思います。

 

まずは元AKB48のメンバーで、現在女優の前田敦子さんを例に見て見ましょう。

 

(注:筆者は特にAKBの熱狂的なファンではありません。)

 

彼女は、AKB48(毎年何百人といるメンバーの中から順位を決めている、日本で有名なアイドルグループ)の発足当初から、不動のセンターとして活躍してきました。

 

彼女がセンターとして活躍し続けることが出来たのは、彼女にもともとそのような能力があったからでしょうか?彼女には、持って生まれた、他の女の子たちと何か違う才能があったのでしょうか?彼女は、他のメンバーと比べ、格段に可愛かったのでしょうか?本当に、秋元康氏が、リーダーとして輝く将来性を見抜いていたのでしょうか?

 

社会心理学の古典的なものに、「Self-Fulfilling Prophecy (自己達成的予言)」というものがあります。小学校を使った有名な実験があり、そこでは小学校の教師二人のうち一人に、「あなたには優秀な生徒たちを教えてもらいます」、と伝え、もう一人の教師には、「平凡な生徒たちを教えてもらいます」と伝えます。実は、生徒たちは適当にランダムに二つのグループに分けられただけなのに(2グループ間にもともとの学力の差はなかった)、学期末の成績では、前者が教えたクラスの方が実際に成績が上回りました。

 

つまり、教師達の、「この子たちは優秀な生徒たちだ」「この子たちは平凡だ」という期待そのものが、実際の教師と生徒間のコミュニケーションに影響を与え、期待がそのまま現実のものになってしまう、という現象です。この心理現象は社会心理学の教科書には必ず載っている重要なものです。

 

前田敦子さんの例に戻してみると、強制的に彼女をチームのリーダーという地位に位置づけることで、まずは周りの人間が彼女をそういう風に扱うようになった、ということが言えます。

 

そしてさらに、周りの期待を助長する現象に「確証バイアス」があげられるでしょう。確証バイアスとは、人間の「仮説や期待に沿った情報ばかりを探してしまう」という、昔によく研究された人間の認知バイアスです。

 

例えば、「日本人は集団主義だ」という先入観をもった外国人なら、きっと日本人が控えめで、周りに気遣って、主張しないシーンばかりが目に入り、そのような情報しか記憶に残らないでしょう。

 

しかし、全く逆に、「日本人は個人主義だ」という先入観をもった外国人なら、きっと日本人のユニークなファッション、わがままな一人っ子、受験における厳しい競争など、そのような先入観に合った情報を多く探し、記憶するようになるでしょう。

 

「おれの英語勉強法は優れている」という信念を持っている人が、わざわざその信念を否定する可能性のある情報を探そうとはしないように、人間は、確証バイアスによって、持っている先入観や期待に合った情報しか好んで選択しない傾向があるのです。

 

そこで、前田敦子さんの例に戻ってみると、「前田敦子がAKBのリーダーだ」という先入観を持った周囲の人は、「あの秋元さんが選んだんだから、すごいに違いない」とか、自然と彼女の「リーダーっぽい」側面ばかりが多く目につくようになります。

 

そしてそのように周囲に扱われていくにつれて、次第に彼女自身も「わたしってできる」と思うようになるでしょう。そうすると、彼女自身の立ち振る舞いや考え方も次第に変わっていき、よりリーダーらしくなっていきます。

 

そうすると、さらに周りの人間が「やっぱり彼女は何か持っている」と、彼らの先入観が正しかったんだと確信できます。このような周りの人間と自分との間のフィードバックのサイクルはどんどん加速していき、数年後にはものすごい変化が起きていることになります。これこそが、「自己達成的予言」のメカニズムです。

 

この可能性を考慮にいれると、実は秋元康氏が本当に彼女の才能を見抜いていた、いないにかかわらず、AKBどのメンバーでも前田敦子さんのような人生を歩む可能性は十分にあったと言えます。極端な話、リーダーをくじ引きで決めてもよかったわけです。

 

少し極端な例をあげましたが、このように周囲の期待に沿って自分自身が変わっていく、あるいわ自分自身の先入観によって相手をも変えてしまう、という場面は日常でも多くあると思います。

 

いつも周りからは「お前はB型だからな~」と言われているとしたら、周りがそういう期待を持っているため、自分の自己中な行動は緩い目で見てもらえるでしょう。逆にB型っぽくない行動をとれば、「お前らしくない」と言われ、そういう行動はとらないようになるでしょう。もともとそんなにB型っぽくない側面も多く持っている人でも、このように周囲から扱われることによって、数年後には「生粋のB型人間」になっていることでしょう。

  

 

自分が親であったなら、たとえ本気に思っていなくても、「お前はできる子だ」と言い聞かせて育ててあげたほうが、数年後には本当にできる子になっているかもしれません。

 

いつも家で「お前はできない子だ」と言われている子供と、「お前は頭が良い」と言われている子供では、勉強に対する姿勢はずいぶんと変わってくるでしょう。仮に同じ知能を持っていたとしたら、両者の間には数年後にはものすごい差がついてしまうと思います。

 

あなたの思いつく、社会で成功している人たちのほとんどは、小さいころから高い自尊心と信念を持ち続けているはずです。彼らももしかしたら、才能においては周りと特に差はなく、常日頃から「俺はできる」という信念を持ち続けた結果、それが現実になった自己達成予言の究極な例なのかもしれません。

 

人間関係において言えば、恋人や親友のネガティブな部分をいつも指摘するのではなく、なるべく良い面を日ごろから意識的に指摘してあげれば、自分自身の新しい気づきを促す事になるかもしれないし、おのずとその人の振舞いはポジティブなものへと変化していくかもしれません。

 

このような古典的な心理現象に着目すると、周りの人間が自分の価値観や人間性に与えている影響、つまり環境が与える力は思っているよりも大きいかもしれないと考えさせられます。

 

 

 

Kodai