Zappos第二弾〜カルチャーの創造と実践
「御社の企業理念を手短に教えてください」
そういわれたら、あなたは躊躇なく、自信をもって答えられますか?
また、あなたの回答を、年齢と部署ををまたいだ他の社員の解答を比較してみた場合、どれほど似通っているでしょうか?
Zapposの最大の強みは、前回紹介した通り、企業カルチャーの徹底。おそらく、Zapposの社員全員にこのような質問をした場合、回答の一致度は非常に高いでしょう。
Zappos 社員の価値観を強く結ぶ役割を果たしているのが、Zapposのバイブルとなる「Zappos Culture Book」。(なんと、このZappos Culture BookはPDFバージョンでダウンロードできてしまいます。ダウンロードをしたい方はこちらのリンクから)
今回は、Zapposがこのような企業カルチャーとZappos Culture Bookをどのようにして作り上げ、実践しているのかについて分析したいと思います。
どのようにして企業理念が出来上がったか?
- アイディアの発足
CEOのトニー氏が企業カルチャーの大切さに気が付いたのは、2004年にZapposがサンフランシスコからラスベガスに移転した時のことでした。ラスベガスに移転したことにより社員数が減り、社員補強しなければならず、トニー氏と人事部は、どのような人材を採用すればいいのか考えました。そこでトニー氏は、Zapposには一貫した企業理念がないことに気が付き、社員全員にZapposとはどのような会社なのかを聞いてみればいい、と思いつきました。 - 調査
トニー氏が直接社員全員にメールを送り、「君にとってZapposの文化とは何か?」「他の会社と比べ、Zapposの文化はどう違うか?」「どういう点について良いと思うか?」という質問に対して、100~500字程度の解答を求めました。なるべく正直な意見を得るため、匿名にしたい人は匿名で、また、誰とも相談しないように促しました。 - コアバリューの設計
全社員の回答をもとに、トニー氏はまず、37のコアバリューをリストアップしました。37では多すぎると感じたため、さらにそこから社員のフィードバックをもらいながら、重要な順に並べ替え、似かよったバリューを合体させたりなど、試行錯誤を繰り返し、最終的に10のコアバリューを捻出しました。 - アップデート
カルチャーはゆっくりと形を変えていくものです。トニー氏はこの点も十分に理解しているため、毎月社員から「Ask Anything」というメールレターを設けて、社員がトニー氏に直接なんでも質問できるようにしています。
どのように実践しているか?
このようにしてできたコアバリューは、Zappos 哲学の核になっているため、採用試験において大きな比重を占めます。一次審査の書類審査をクリアしたあと、最終審査のインタビューでは、これらのコアバリューを突く質問が用意されていて、価値観の合わない応募者はたとえどんなに良い経歴を持っていようと落とされます。
*インタビュー質問の例:
- 「仕事をこなすために、最後にルールや規則を破ったのはいつ?」(どれだけ冒険的か?)
- 「仕事において今までした最高のミスは?なぜそれが最高だったか?」(どれだけクリエイティブに考えられるか?)
考察
企業理念や企業の歴史を事細かに記したハンドブックのようなものを設けることは、日本のどの企業も行っていることで、特別な事ではないと思います。しかし、Zappos Culture Bookは以下の点で異なっていて、また参考になるのではと思います。
- ボトムアップ型 ー 通常なら、社長が決めた理念を社員に教え込むトップダウン型なのに対して、Zapposの場合、あくまで社員一人ひとりの価値観に基づいている。
- 直接性 ー 社長に一人ひとりの意見が直接伝わり、社員の声が届きやすい。
- 共有性 ー 価値観に基づいて採用するため、価値観の共有度が高いまま維持される。
- 柔軟性 - 定期的にフィードバックをもらいアップデートをすることで、社内で起こりうる微妙な変化に対応できる。
最後に
トニー氏も自身の本で強調していますが、コアバリューはそれぞれの会社によって異なるはずなので、Zappos のコアバリューをそのままマネすることは誤りだと言っています。しかし、Zappos がカルチャーを作り上げた手順や、実践の方法は、大いに参考になるのではないかと思います。
続く。
引用元:Delivering Happiness: A Path to Profits, Passion, and Purpose